その船は、今にも一隻の海賊船に襲われようとしていた。
しかし、ミケノビッチ船長は副長に「オレの赤いシャツを持って来い!」と叫び、
船長はそのシャツを着るや、獅子奮迅の働きで、多数の死傷者を出しながらも海賊達を追い払ったのである。
次の週、二隻の海賊船が襲ってきた。
やはり船長は、例の赤いシャツを持って来させて、さらに多くの死傷者を出しながらも、海賊船を追い払うのに成功したのであった。
その晩のささやかな祝賀会で、新入りの水兵が、船長におそるおそる尋ねてみた。
「あの。船長はなぜ戦いの時に赤いシャツをお召しになるんですか」
「うむ!!」ミケノビッチ船長は生意気な水兵をジロリと睨みつけながら言った。
「わしが戦いで傷を負っても、赤いシャツが血を隠してくれる。
船員どもが怖じ気づくことなく、戦うためじゃ」
水兵をはじめ、それを聞いた男達は、自分たちの剛毅な船長を心から頼もしく思ったのであった。
次の日の明け方、今度は十隻の海賊船が近づいてきた。
戦い慣れた船員たちも、さすがに押し黙って船長を見上げた。
ミケノビッチ船長は、いつものように平静な面もちでどなった。
「おい。オレの茶色いズボンを持って来い!!」(笑)
(2014/11/13)