「留守の間は何事もなかっただろうね?」
「はい。旦那様」メイドは答えた。
「お屋敷はたいそう静かでございます」
「ははは。そうか」上機嫌のミケノビッチは続けた。
「イヌは元気か?」
「それが・・・旦那様のイヌは死んでしまわれました」
「なんだって?あんなに元気だったのに。病気にでもなったのか?」
「いえ・・・腐った肉を食べたようでして」
「腐った肉など、どこで見つけたのだろう?」
「旦那様の大事になさっていた馬の肉でございます。死んでから三日間もほっておいたものですから」
「あの買ったばかりのサラブレットが!どうして死んだんだ?」
「馬小屋が火事になって、逃げられなかったのでございます」
「馬小屋が燃えたって?なぜそうなったんだ?」
「母屋の火が燃え移りまして」
「なんだって!!わしの家が燃えてしまっただと?」
「旦那様のお母上の通夜のロウソクの火がカーテンに燃え広がったようでございます」
「母が亡くなっただと?あんなにピンピンしてたじゃないか?」
「ショックのあまりに、突然に亡くなられたのでございます。
奥様が、旦那様の全財産を持って、男と駆け落ちされたものですから」
「おおお・・」