ジェームスと妻のキャシーは
毎年春に夫婦で州のお祭りに出かけた。
毎年ジェームスが言う。
「ねえキャシー、遊覧ヘリコプターに乗ろうよ!」
キャシーがいつも応える。
「でも、100ドルもするのよ。なんてったって100ドルだから。」
今年もジェームスとキャシーはお祭りにやってきた。
ジェームスが言った。
「ねえ、キャシー、もう二人とも80才だからなあ。
今年遊覧ヘリに乗らないと、来年は乗れないかもしれないよ。」
キャシーが言った。
「でもねえ、100ドルもするのよ。なんてったって100ドルですから。」
それを聞いていた遊覧ヘリのパイロットが言った。
「じゃあ、タダでヘリに乗せてあげるよ。
ただし、飛行中に一言も声を出さなかったらだけどね。
もし、声を出したら100ドル払って貰うっていうのはどうだい?」
老夫婦はその話をOKしてヘリに乗った。
パイロットは二人に声を出させようと、
急上昇や急降下を繰り返し
真横になるほど機体を傾けたり、
可能な限りのアクロバット飛行をしたが
ジェームスとキャシーはとうとう全く声を出さなかった。
着陸してからパイロットがジェームスに言った。
「負けたよ! なんとかして声を出さそうとしたんだけど、
あんたたち夫婦にはかなわないよ。」 ジェームスが言った。
「なんたって100ドルだからね。でも・・・
キャシーが落ちてしまった時はもう少しで声を出しそうになったけどね。」