長年牧場の仕事をしてきた親方が、
弟子を連れてしば刈りに行った。
「親方。この木、じゃまだから切ってしまいましょう」
「待て!50年前、わしはこの木の下で、
男として初めての体験をしたんじゃ。思い出の木じゃ。
残しておいてくれ」
「へえ。そうなんですか。
親方も隅におけないなぁ。
じゃあ、あっちの木を切りましょうか」
「待て!その初めての体験のとき、
あっちの木の下で彼女の母親がじっと立っておった。
やはり思い出の木じゃ。残しておいてくれ」
「親方。もしかして初めての体験のとき、
相手のお母さんにずっと見られてたんですか?」
「そうじゃ」
「お母さん、黙ってなかったでしょう。
何て言いました?」
「モー」