仕事場にある金目の物や備品を労働者たちがくすねるのを防ぐために、
門では守衛が見張っていた。
その守衛が、手押し車に袋を乗せて
通り過ぎようとするイワンに目を付けた。
「袋の中はなんだ? イワン」
「おがくずでさ。こいつをうちでたき付けにするのを
監督さんが許可してくれたんだ」
しかし、守衛はイワンの言葉を信用しない。
「開けるんだ!」
袋の中味をぶちまけたが、
本当におがくずしか入っていなかった。
次の日も同じ場面が繰り返された。
「今度はだまされないぞ。開けろ!」
言われるままイワンは袋を開けたが、
おがくず以外なにもない。
三日目、四日目と、同じことが繰り返された。
一週間がたったある日、
ついに守衛は根負けしてしまった。
「なあイワン、お前が何かくすねてるってことはわかってるんだ。
だけど、もうおれは検査しないよ。おれは見て見ぬふりをする。
誰にも言わない。だから、
こっそり教えてくれ。一体何をくすねてるんだ?」
「手押し車でさ。」