ある暑い日、二人の男が溝掘り作業に汗を流していた。
一人の労働者がもう一人の仲間に向かって、
「俺達はかんかん照りの中で溝を作るために
地面に穴を掘っているっていうのに、
どうして親方は涼しい木の影の下に立っているだけで済むんだ?」と言った。
「わかんねぇなぁ。親方に聞いてみよっか?」
と相棒は答えると、
穴から這い出して親方が立っている木陰へ歩いていった。
「ねぇ、俺達はかんかん照りの中で溝を掘っているのに、
なんで親方はこの涼しい場所で立っていられるんですかねぇ?」
と労働者が聞くと、「知能の差だな」
と親方が答える。
「知能って、それどういう意味ですか?」と
労働者が尋ねると親方は
「そうだな、わかりやすく教えてやろうか。
俺が片手をこの木の上に置くぞ。
いいか、お前は握り拳で思いっきり、
俺の手をなぐっていいぞ。さ、やってみろ」
と言って、片手を木の幹の上に広げた。
穴掘り労働者は思い切り力をこめて、
自分の拳骨を親方の手めがけて突き出した。
その瞬間親方がヒョイと手をどけたものだから、
労働者は思いきり自分の手を木の幹にぶつけてしまった。
「これが、知能の差さ!」と
親方が勝ち誇って言った。
穴掘り労働者が自分の仕事場に戻ると、
相棒が聞いてきた。
「ね、親方は何て言っていたんだ?」
「俺達が地下で働いているのは知能の差があるからだってさ」と答えると相棒は
「知能って、何のこと?」と尋ねた。
先程手を痛めた労働者が自分の顔に自分の手を当てて、
「いいから、お前のシャベルで俺の手を思い切り叩いてみな!」と言った。