失業中の男が今日も仕事を見つける事ができず、
運河沿いに歩いていると、救いを求める声がした。
すぐに駆けつけると、男が一人おぼれかけている。
駆けつけた男は水の中の男に聞いた。
「名前はなんというのかね」
「デュポン、カミーユ・デュポン!
俺は泳げないんだ、早く助けてくれ!」
「どこで働いている?」
「すぐ近くのセメント工場だ。
そんなことより、お願いだ、助けてくれ!」
それだけ聞くと失業者は
脱兎のごとくセメント工場に走り込み、
人事課に突進した。
「お宅の会社にカミーユ・デュポンとか言う社員がいるはずだ。
彼はたった今死んだ、代わりにおれを雇って欲しいのだが」
「ああ、一足遅かったな」
「まさか? 今運河でおぼれ死んだばかりだというのに!
そのポストは誰に?」
「彼を運河に突き落とした男にだよ」