パリの古美術商が掘り出し物はないかと
田舎まわりをしていた。
彼は地方の古物商だけでなく
卵を買うという口実で農家にも立ち寄り
横目で古い家具・調度品などを物色した。
ある日、ある農家で彼は大変なものを見つけた。
中世の茶碗である。
めったにないもので、
彼は思わず息をのんだ。
どうやら猫のミルク茶碗に使っているらしかった。
彼はぐっと落ち着こうとしながら、
何気ないふりをして男に言った。
「かわいい猫ですね。
息子への土産にしたいんだが、
売ってくれませんかね?」
「いいですよ」と、男は言った。
古美術商は金を払って猫を抱くと
さっそくきりだした。
「ところで、あの古い茶碗も一緒にいただけませんか?
猫ちゃんも慣れているのがいいでしょうから・・・」
「いや、そいつはダメだ。
あの茶碗のおかげで
わしは先日からもう
12匹も猫を売ったんだからね」