ある老人が死の床に伏していた。

余命数時間しかない彼の鼻先に、
突然チョコレートクッキーの甘い香りが漂ってきた。

彼はチョコレートクッキーに目がない。

最後の気力を振り絞り、
一足一足慎重に階段を下り、
やっとのことでキッチンにたどりついた。

そこでは彼の妻がチョコレートクッキーを焼いていた。

どうやら愛する妻が自分のために焼いてくれたらしい。

老人が目を潤ませながらチョコレートクッキーに手を伸ばすと、
妻が手にした木べらで彼の手をぴしゃりと叩いた。

「ダメよ、葬式用なんだから!」

2021/09/28(火) 04:50 笑い 記事URL COM(0)