タクシーに乗ったひとりの客が、
乗車後ずっとひと言もしゃべらずにハンドルを握っている運転手に話しかけようと、
後部座席から運転手の肩を軽くトンとたたいた。
すると、運転手は悲鳴をあげながら震えあがって驚き、
タクシーは急ブレーキをかけ、
道路の脇でスピンして止まった。
「わ、悪かったな、運転中に。
しかし、ちょっと肩に触れただけでそんなに驚くとは・・・。」
「お客様、すいません。実は私は今日。
タクシーの運転手になったばかりだったもので」
「あんた運転手をはじめたばかりなのか。そりゃ、慣れるまで大変だな。
でも、なんで後ろからちょっと触れただけのことで、そんなに驚くんだ?」
「昨日まで、葬儀屋で霊柩車の運転手をしていたんです」